福岡地方裁判所 昭和37年(む)192号 判決 1963年3月18日
被疑者 中村スエノ
決 定
(請求人・被疑者氏名略)
右被疑者に対する公職選挙法違反被疑事件に関する福岡地方検察庁検察官の処分について、弁護人から不服申立があつたのでつぎのとおり決定する。
主文
福岡地方検察庁検察官は、昭和三十八年三月十八日午後四時から同日午後五時三十分までの間に三十分間弁護人を被疑者と接見させなければならない。
理由
被疑者は昭和三八年三月十七日福岡地方裁判所裁判官によつて勾留され、同時に弁護人以外の者との接見を禁止されたものであることが明らかである。しかして被疑者弁護人吉田孝美は同日および同月十八日の二回福岡地方検察庁検察官に被疑者との接見を求めたがいずれもこれを許容されなかつたことを認めることができる。
検察官が右両日にわたつて弁護人との接見を制限したのは、いずれも被疑者取調べの必要にもとづくというのであるが、そのような事情が存在したとしても、二日間にわたり接見の機会を全く与えないことは、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するものであつて違法であるといわなければならない。よつて、本件申立は理由があるので、福岡地方検察庁検察官のなした前示の接見を許さない処分を取消し、接見の時間については三十分を以つて足りると認めて主文のとおり決定する。
(裁判官 宮本康昭)